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高橋一聡&村松歩 「ラグビーのオジサン」たちが外を向くとき
2022.2.9
INTERVIEW

RCCA(Rugby Culture Club Association)が伝えたいものは、たくさんあって一言ではちょっと表しにくい。だけど、そのメンバー一人ひとりのストーリーを紐解けば、コミュニティーの持つ空気や、バックグラウンドが見えてくるかも。彼らはどこから来たんだろう。何を目指しているんだろう。第2回は代表理事の高橋一聡さん(左)と副理事・村松歩さんのお二人と、RCCAの理念や、今最も力を入れている魔法のやかん基金について聞きました。


――高橋一聡さんと村松歩さんは、一般社団法人 『Do One Good』の代表理事、理事を務められるなど、もう15年近く苦楽をともにされているんですね。RCCA設立は、2019年ワールドカップに向けた動きがきっかけですね。

一聡「ラグビーがグラウンドで見せてくれるパフォーマンスは、すっごく重要だし、がんばってほしいなって思っているんだけど。ラグビーが世の中に打ち出せるインパクトって、それだけではないなと」

歩 「直前まで、このワールドカップは成功するのか? みたいな声は根強かった。自分たちにできることは何だろうって話してた」


――お二人とも、大学ラグビーの強化に関わっていますね(高橋=学習院大、村松=青山学院大のヘッドコーチ)。

一聡「そうそう、今は大学ラグビーでさえも二極化していて、スポーツとの関わり方は多様化しているでしょ。一部のエリートの人たちの評価基準である『強い、速い、上手い』だけではない価値。ラグビーそのものというより、ラグビーを通じて学んだことで、社会に生かせていることって、確かにある。これがあるから、俺たち生きていけているねって、そういう資質みたいなもの」

歩 「これ、選手がグラウンドで見せてくれるものに比べたら、世の中には結構伝わりづらいってわかっているんだけどね。ただ、その良さをもっと共有していくことなら、僕らにも少し手伝いができるんじゃないかと」

一聡「痛感するのは、ラグビー選手のありようの違い。今はプロ化して、プレーの対価が現実的に発生していると思うけれど、俺たちの世代は完全にアマチュアだった。これ懐古主義でも何でもなくて、僕らには僕らの長けているところがある。つまり、金銭とは別軸のところで身につけてきたことを、社会でどう生かすかってことについては、昔の人の方ができていたはずなんだ。いまコーチしている学習院の学生たちも、卒業すると一気にラグビーから離れてしまう。だからこそ、社会で『それ』を生かしていくこと、かつてよりも重要になっていると思う」

胸張っていいことをする。

歩 「日本ラグビー協会がラグビーを世の中にアピールしていくのとは、別軸の文脈だよね。例えば、感覚としてはこんな感じ。――居酒屋でさ、隣のテーブルの若い子たちがどうもラグビーっぽいよなって感じる時、ない? え、ラグビーやってんの、俺たちもやってたんだよ。そうかそうか。じゃああれだよ、みんな一杯ずつ飲みなよ、みたいなこと。ラグビーって、そういう世話焼きなところあるじゃない? やってる奴に会うとうれしい(笑)」


――少数民族だから、話すとどこかで人同士がつながっている。

歩 「俺らもラグビーで育てられたからさ、っていう恩も自負もみんなある気がする。それで、RCCAのイメージはね、そのような空気が流れる場を作りながら、もっと他に、ラグビーのオジサンたちが、直接に何ができるかを具現化していけたらいいなと」

一聡「ルール化だよね。そういうのってちょっと恥ずかしいなとか、受け入れてくれなかったらどうしようなんて躊躇しちゃうこともある、それ、全然OKって文化ができれば、オジサンたちも胸張っておごれる。胸張って、自分たちのいいところを表現できる。若い子の方はさ、やったおごってもらったラッキー! で全然OK。その思いがわかるのはずっと後でいいのさっていう循環」

歩 「端的にいうと、そういう『いいこと』を、するマインド、ラグビーで育った人間は培って共有していると感じる。今までは内向きだったけれど、これからは外向いてそれ発信していこうよと」


――RCCAが取り組み始めた「魔法のやかん基金」(ケトルファンド)、これも、全然違うようで、似たマインドですね。ただ、基金となると、仕組みづくりはかなり大仕事ではないですか。公平性の問題もある。

一聡「たいへんだし、重要なところ。一方であえてマインドの話を伝えさせてもらうとね、困ってるって言ってきている人がいるのなら、知った以上は全部助けたい。そこは変えたくないところ。もちろん、一定の大人の基準で書面の申請をしたり、手続きを踏んだりは当然必要。あとは、一人ひとりと俺たちがていねいに向き合って、経験を積んで見えてくるものがあるはず。マインドはそこ」

歩 「それで社会的に受け入れられるかどうか、素人の集まりでは限界があるので、この種の事業に長く携わられている『あしなが育英会』(一般財団法人)のスタッフにサポートをいただいて。細かなところも逐一、アドバイスをもらいながら進めてます。育英会の中にもラグビー関係者が結構いらっしゃって、その中で個人としてRCCAに入ってくれる人がいる。その方たちのサポートが本当に大きい」

一聡「あしながさんの支援を受けている子ども、学生の中に、ラグビーをしている子もいる。あしながさんが行ったアンケートでは、コロナで部活動ができなくなったとか、部員が減って一人になってしまって、今は一人で練習しているんだとか、そういう話があるんですね」

歩 「僕たち当初は、ケガをしてラグビーを続けられなくなった子たちを想定していたんだけれど、数としてはそれ以上に、家庭事情や経済的な理由で部活ができなくなった、というケースがたくさんあるだろうことに気がついた。声を上げることもないヤングケアラー含め、そういう視点でも要支援者へのアプローチが必要だなと」

制度が先ではなく、まず助けること

一聡「あしながさんの話ですごく影響を受けたのが、最近まで、法人化をずっと拒んできたってこと」

歩 「少し前まで、任意団体だったんだよね」

一聡「法人化をすると、法的な手続き、縛りがたくさん出てくる。そこ手間かけるなら、自分達は一人でも多くの子を助けたいんだ、と。出会った子を全部助けたいんだっていう設立時の思いから、法人化してこなかった」

歩 「もちろんお金の流れには透明性がなければいけない。ただ、そこさえきっちりできれば、現場は公平性なんて言ってる場合じゃないものね」

一聡「被災地でもそうだった(二人は災害支援でペットに関わる活動を続けている)。避難所に300の支援物資が届いたけど、避難者が500人いる。公平性を保てないから、誰にも渡せない――みたいな場面。それってやっぱり制度を乗り越えていこうよってとこだと思う。やろうと思えば、300ぶんを500で分け合うとか、とりあえず300は渡して、あと200を死ぬ気で集めるとか、できるはず。それをずっと続けてきたのが、今のあしながさんなんだと思う」

歩 「ケトルファンドも、まず寄せられた一つひとつのケース、一人ひとりと向き合っていきたい」

一聡「結果、支援金が足りないってことになったら、また会員を増やすしかない。実際にいる子を助けたい。それがモチベーションになって動く、成果を出す。それでいいと、最初のメンバーたちは思えているから、これで走り始めてみます」

歩 「高橋も自分もたまたま今、大学生の現場に関わっていている。すると学生たちの中には大なり小なり、個人が抱えてる問題がある。そんな時、コーチとして、大人として、ラグビーのOBとして、何とかしてあげたいなと思う。だけど個人ではどうしようもないこともある。そんな時に、仲間に相談してみようって思える場があったら。

すぐにできることは小さなことでも、当事者の困ってる学生にリアクションすることができる可能性出てくる。現場にいないオジサンでも、ラグビーはそういう活動に加われるって感覚を持ってもらえるんじゃないかなと」

一聡「支援する側の納得感も満足感も大事にしたい。それが、事業が長続きするカギでもあるはず。一番は、当事者のその子が、その子の声で『ラグビーのオジサンたち、ありがとう!』って言ってくれることじゃないかと。一つの実績だと思う。それで彼らがまた次の世代の後輩たちとつながってくれたら、事業として成功って言えるんだと思う」

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