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安藤健司(菅平サマーフェスティバル実行委員会)「ずっと、ともだち。ラグビーファミリーがくつろげる場を作りたい。」
〜コミュニティの背景がわかる、RCCAメンバーのストーリー〜
2024.2.15
INTERVIEW

安藤健司(あんどう・けんじ)(写真右)
『菅平サマーフェスティバル』実行委員会事務局。実質の主宰/1976年生まれ、横浜市出身/2023年8月、ラグビーの夏合宿地・菅平高原(長野県)で、全国から集まる保護者と選手の「お祭り」を企画。多くの人の共感を得て、当日は500人が集まり第1回を成功させた。自身はバスケットボールに親しんだ。2019年からは神奈川と菅平の2拠点生活を営む。

RCCA(Rugby Community Club Association)が伝えたいものは、たくさんあって一言ではちょっと表しにくい。だけど、そのメンバー一人ひとりのストーリーを紐解けば、コミュニティーの持つ空気や、バックグラウンドが見えてくるかも。彼らはどこから来たんだろう。何を目指しているんだろう。今回は、2023年夏にRCCAスタッフが出会い、イベント共催に至ったある紳士をご紹介する。RCCAとは、互いに近い将来図を思い描いている。


【大学4年のラガーマンの父親です。夏は菅平で、こどもたちのラグビー観戦が楽しみでした。コロナ禍の3年間、菅平で会えなかったこどもたちや保護者の方と4年ぶりに出会える場所を作りたい。全国から菅平に集まる、選手、保護者みんなで楽しめるお祭りを開催させてください。】

6月末に立ち上がったクラウドファンディングのページには、切実ながら楽しげな言葉が躍る。果たして2023年の8月15日、長野県の菅平高原で花火は上がった。

当日の会場、菅平高原アリーナ近くには、キッチンカー4台、のべ500人のファミリーが集い、輪を作り、夜は花火を見上げて語らった。久しぶりに顔を合わせる、選手の家族どうしの再会の場は、みんなが求めていたものだった。

イベント開催の中心になったのは横浜市出身の安藤健司さん。大学生ラグビーマンを長男に持つ会社員だ。いち保護者として企画した「聖地」でのイベントにはどんな思いが込められていたのだろう。

菅平に、家族のためのくつろげる場所を

この短期間にこの成果。計画はかなり綿密にされたのでしょうね。

いえいえ… ゴールデンウィークの頃に、飲み話から始まったくらいですから、ドタバタで。「菅平で、みんなで花火でも上げたいね」と仲間うちで言い始めたのがきっかけでした。私自身はいち保護者で、かつて息子同士が同じスクールに通っていたご縁のある人たちとの席でした。

ラグビーとの関わりはいつからですか?

長男(良太さん/現・東海大4年HO。大学選手権最終戦にはリザーブ出場)が5歳の時、横浜ラグビースクールに入ったことですね。その後小中高大と、子どもの菅平合宿を見に来るようになって、ほとんど毎年、出かけていました。私自身はラグビーの競技経験はありません。

スクールの子供達は、中学までは一緒に過ごせるけれど、その後はあちこちの学校に散って、大学になるとさらに全国に…。そんな中、毎年夏に菅平に来れば、子供たち同士も会えるし、私たち家族も会って話せる。

菅平がいいのは、強豪校だけの場所ではないことです。もちろん正月に花園に行けば、常に全国レベルの選手たち同士は会えるでしょう。それは素晴らしいことですよね。うちの場合は…高校が東海大相模で、神奈川は桐蔭学園のお膝元、全国の強豪です。花園にいけるチャンスは限られている。けれど、菅平には夏だけで700チームが訪れる。ここなら、学校の強さや、1本目、2本目(一軍、二軍)などのチーム内のグレードにも関係なく、足を運べば試合をやっている。だから、選手同士も家族同士も会える機会になっているんですね。

ウチで言うと、高校なら國學院栃木から、仙台育英、札幌山の手にまで同期の友達がいます。そういう人たちには菅平でしか会えないから、試合も、自分の子だけでなく友達の子の試合を観に行ったりします。お互い、その後の成長した姿を見られるのはとても楽しみで、感慨深くもあります。

お泊まりは、菅平で取れますか。

そうなんです。宿はどこも選手やスタッフ、一部のOBまででいっぱい。家族は上田や須坂まで移動して泊まっていることも多いんです。グラウンドにも、試合を観に来た人がちょっと座って話せるようなお店はない。食事のお店は、ハイシーズンはどこもいっぱいです。

今回のイベントで叶えたかったのは、私たちのような、選手を応援する立ち位置の人でも、せめて年に1回、くつろげる場所を菅平に作りたい、ということでした。

その実現の過程で、RCCAのメンバーとつながったのですね

菅平の方たちが紹介してくださいました。「同じように考えている人たちがいるから、連絡取ってみたら」と。それで高橋さん(一聡)、北川さん(茉以子)とお会いして。RCCAは一定期間、別の会場(プリンスガーデン)でイベントを開いているとのことだったので、コラボレーションして、8月15日の本開催の日は、RCCAの方も、お店も、アリーナ(安藤さんのイベント会場)の方へ集まってくださることになりました。たいへん、盛り上げていただきました。

花火、キッチンカー、共催…。「菅平」を中心に輪が広がった

開催に向けて呼びかけたクラウドファンディング、ひと月もかからずに目標額100万円を達成しています。すごいパワーです。予算はかなりかかったのではないですか。

予算は全体で150万円ほど。いろんな方からのサポートに恵まれました。キッチンカーは「江戸清」(中華まん・横浜)、「大阪とらふぐの会」(東京)、「髭の鹿タコス」(菅平)。上田市のクラフトビールも出店してくれました。協賛金まで出してくれたお店もあります。

日本ラグビー協会の「スクラムジャパンプロジェクト」からは助成金をいただくことができました。長野県ラグビー協会が共催に入ってくださり、SBC信越放送と信濃毎日新聞は後援に。これだけのサポートを受けることができたのは、やはり多くの方がそれを望んでいたのだろうと思います。たいへんありがたかったです。

当日はどれくらいの人が集まったのですか

500人ほどでした。実は前日まで台風の予報が出てしまって…。それでも前日には通過してくれまして。あとは、初回ということでうまく告知ができなかったことは残念でした。

立ち上げたばかりのイベントで500人! すごい成果です。

ラグビーそのもののポテンシャルだと感じています。私自身も、ラグビーを通じて人生を楽しませてもらっている。「菅平にくつろげる場所を」という、同じ方向性を持ったRCCAの皆さんとも知り合うことができました。

特に今回は、子供たちの家族同士の再会が、印象的でした。

ちょうどウチの子の代は高校3年の終わりから三密回避が始まって、2023年の春までは無観客で試合をしていました。保護者の立場で言うと丸3年は試合を観られない期間があった。3年間、会えていない方々がいたことになります。大学の同期の保護者会もそれまではオンラインで、4年目にして「直接会うのは初めてですね」と。

家族の歴史にも関わる、特別な会になりましたね。

楽しかったです。久しぶりの顔ぶれで輪になり、それが広がって。「こういう会を作ってくれてありがとう」。そんなお声をたくさんの方からいただきました。同じように感じて過ごしてきた人たちがこんなにもいらしたんだと驚きましたし、この場をまた来年以降も持ちたいと、強く思いました。

面白かったのは、他の学校関係の方で「せっかくみんなが来るのだから、ここで保護者会をやってしまおう」という声が聞こえてきたこと。そうやって、このサマーフェスティバルが皆さんにとって夏の定番になっていったらいいなと、ふと思いました。今後は、家族だけではなく、選手同士のアフターマッチファンクションをセットで行なってはどうか、というアイデアも出ています。

転職。菅平と神奈川の2拠点生活へ

選手の家族の代表である安藤さんにあらためて伺うと、安藤さんご自身がここまでラグビーに深く関わるようになったのは、どうしてなのでしょう。

私自身はバスケットをやっていたのですが、ラグビーを観るのは学生時代から好きでした。法政二高に通っている時が法政大学が強い時代で。その応援にラグビー場に行っていました。ちょうど、中瀬さん、苑田さんが1年生ハーフ団の時…(中瀬真広氏=SO/元・東京ガスヘッドコーチ、苑田右二氏=SH/元神戸製鋼ヘッドコーチ)

25年ぶりの大学選手権優勝! HOは坂田さん(正彰)、PRは中島さん(貴司)…

そうです、そうです。バスケとは正反対に、ガンガンぶつかり合って。息子にも何かスポーツはやらせてあげたいと思っていたところ、横浜ラグビースクールをネットで知って。「やりたい!」ということだったので、一緒に行って息子の試合を観るように。

新鮮だったのは、ONE FOR ALLとかNO SIDEといった理念が、そのまま競技に表れているのを、息子の姿を見て実感できたことでした。相手チームの子と試合後に話したり、遊んだり。

選抜チームで一緒だった明治の伊藤耕太郎(現4年)は別のスクールでしたが、大学のオフなどにも会っていたり、本当に仲がいい。バスケでも、一部で友達関係が続くことはありますが、チーム全体であれだけ仲良くする、というのは…私の周囲だけなのかもしれませんが、発想としてなかったんです。ライバルはライバルのまま…。

ラグビーには垣根がない。それが本当に素晴らしいと思う。私のような門外漢も自然に受け入れてくれる。ずっと、そんな空気の中に居させてもらえたので、家族同士もチームを超えた繋がりができました。今回のイベントに反応してくださる方が多いのも、ラグビー独特の文化なのかもしれません。

今回の準備のために、どのくらい現地で過ごしたのですか。

1か月ほど前からですね。

! 菅平にひと月ですか?

実は2019年に、小さな住まいを菅平に購入しました。宿も、上田と菅平の現地移動もお金や時間がかかる。泊まれるところを自分で確保した方がいいかなと思って、少し探してみたらいい物件が。それが高じて、今は2拠点で生活しています。職も、以前は役所に勤めていたのですが、今は建設系の会社に変わりました。

今はオンラインやテレワークも使えますね。

以前は夏の菅平しか知らなかったのですが、冬も素晴らしい場所です。自然は厳しい。その分、楽しい。住んで4年目になりますが、周りの方もいい方に恵まれて。もともと菅平の方々とのネットワークはある程度できていたのもよかった。今は、さらに菅平にウエートを置いた暮らしをしたいと考えています。ラグビーを通しての菅平だけではなく、違った面を多くの人に知ってほしいし、いろんな人に菅平を訪れて、楽しんでほしいと願っています。

もともと、農業、スキーと時代により「推し」を変えて発展してきた菅平は今、選手だけのものではない場になった。安藤さんが周囲の人々と実現した「菅平サマーフェスティバル」は、ラグビーの周りにいる人、支える人の願いを見える形にした。さまざまな人との関わりが見えれば、発想や構想はより豊かなものになっていく。2023年の夏のお祭りは、菅平とラグビーを愛する人たちにもヒントに満ちたイベントになった。輪の中心には、選手の家族としてこの地と出会ったパパがいる。



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