小林花奈子(こばやし・かなこ)
日本代表キャップ12/エクセター・チーフス・ウィメン&横河武蔵野アルテミスターズ/1998年生まれ、25歳。神奈川県出身。CTB/石見智翠館→日体大→横河武蔵野アルテミスターズ/エクセター チーフス ウィメン(イングランド)。日本代表キャップ12。2019年11月イタリア戦で初キャップ。2021年8月からエクセター所属、イングランド最高峰の女子リーグ『Premiers 15s』でプレーする。国内では横河武蔵野アルテミスターズ所属。チーフスとの契約2季目。
RCCA(Rugby Community Club Association)が伝えたいものは、たくさんあって一言ではちょっと表しにくい。だけど、そのメンバー一人ひとりのストーリーを紐解けば、コミュニティーの持つ空気や、バックグラウンドが見えてくるかも。彼らはどこから来たんだろう。何を目指しているんだろう。日本代表でも活躍する小林花奈子は、自らのチャンレンジを通じて、女子ラグビーに道しるべを残したいと願う。
※記事内容は2024年3月現在のものです
まずはパフォーマンスを上げること。もう一つは、発信をしていくこと。SNSなどで自分とその周りの情報が伝わっていけばいい。そこに、意識的に取り組みたい。時差があっても、SNSなどでログが残っていれば、日本の側の都合のいい時間に見てもらえるかな、と思います。
もともとは、そうですね。ただ、現地で英語を話す! となると、やはり緊張してしまう。聴き取る方もなかなかたいへんで。私のコーチは二人がアイルランド人で、すっごく特徴的な英語を話すんです。私の耳では、どこが単語の区切りなのかが全然わからないような(笑)。だから、近くにいる人にちょっと来てもらって、「アイルランド英語のアメリカ英語訳」をしてもらったり、「アイルランド英語のイギリス英語訳」をしてもらったり。
ははは! そうですね。そもそも所属するエクセターは『多国籍チーム』。オーストラリア、アメリカ、カナダ、オランダからの選手もいる。アジア人は私だけ。同じリーグの他チームにも国外の選手は結構いますね。
もちろん、基本となる勉強をしっかりとやることが大事です。が、完ぺきに話せなければ現地でプレーできない、というわけでは決してない。だから私は思い切って『しゃべれなくても大丈夫! ラグビーはできるよ』って伝えることにしています。海外挑戦する選手にとって、言語のことって不安感が大きいですよね。だけど、実際、やるのはラグビーなので。大丈夫。言葉はツールです。伝えたい、理解したいという気持ちも大きな割合を占めると感じています。
日常会話がまだまだ、のレベルなので、「あ、いま私、話から置いていかれているなあ」と感じるようなこともあります。ありますけど、性格上それほど気になってないかもしれません。何より、周りの方がとても優しいんです。チームの人も、厨房の仕事のほうの皆さんも、何かと声をかけてくれる。私の住んでいる地区には日本人のご家族の方もいらっしゃるのですが、夕食が和食の時には私を招いて下さったりします。ほっとする時間です。
2023年、エクセターとの契約が切れて日本に戻ってきました。いつも仲良くしてくれている青木蘭さん(横河武蔵野Artemi-Stars)に声をかけたら、岸岡さんと繋いでくださった。「私、仕事がなくなったので、何かできることありますか」って伝えて。「サポートコーチは」と聞かされて、すぐに『ぜひ行かせてください!』と返しました。
プロとして自分の所属がなくなった時期でした(結果的には同年11月にエクセターと再契約)。珍しく、精神的なしんどさを感じていました。自分がそれまでラグビーに打ち込んできたことを否定しまったり。『自分の求める生き方は、もしかするとわがままなんじゃないか?』と考えてしまったり…。ただ最後は、ラグビーに集中できるこの時間を、できる限りまっとうしようって決めました。今しかできないことをやろう、と。
性格的なものなのかな…。まだまだ教える経験も多くないのに、『私、ラグビー教室には向いているのかも』と感じられたんです。岸岡さんのラグビー教室は、参加してくれているみんな(プレーヤー)、それぞれが『できないことを』できるようにしていく場でした。コーチの私自身にとっても、弱みも含めた自分をさらけ出す時間になりました。今できることをやるための私のエフォート、それを認めてくれた。
自分のさせてもらってきた経験を、私だけのものにしておくのは、すごくもったいないんです。自分がこれから経験することも、そうなんだ! と、その時(渡英前)に思いました。言葉を含めて、いろいろな障壁はあるとしても、その場に立っていること自体が『自分だけのものではない』『誰かに共有できる、大切なものだ』と思えました。背中を押される思いでした。
ワールドカップ以外では初めての世界大会。もう、すっごく楽しかったです! 日本代表としては、これまでは単発の対戦を重ねていたところから、長期間にわたって海外に出ていくことになります。選手として、単純に言えばこれはストレスです。職場など、環境的にそれが許されるコンディションをいろんな方に整えてもらえた上で、食事や生活の面でも見えない疲労がたまっていく。体重が増えてしまう選手、減ってしまう選手もいる。約1か月、海外で過ごすこと、その間にテストマッチを3試合連続して戦うこと。すごく勉強になっています。
ラグビーは世界も国内も、常に改革を進めるプロセスにある。選手の職業的なステイタス(社員かプロか)、大会などの仕組みなど、チームも選手も常に変わっていく環境に適応して、グラウンド上のプレーを生み出している。「自分の今は、自分だけのものじゃない」ととらえて進む小林選手の歩みは、前にも増して力強い。
※記事内容は2024年3月現在のものです