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「岸岡智樹のラグビー教室」三年目の挑戦 セルフレポート #2
〜番外編 / 岸岡智樹(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/RCCAメンバー) 編〜
2023.11.9
INTERVIEW

岸岡智樹(きしおか・ともき)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイに所属する現役選手。SO。1997年9月22日生まれ。178㌢、85㌔。大阪府出身。枚方ラグビースクール→蹉跎中→東海大仰星高→早大→スピアーズ。社会人4年目の社員選手。U20日本代表、ジュニア・ジャパン選出。学生時代からSNSをはじめ独自の発信を続ける。小中学生を対象に全国でおこなうセッションツアーは2023年で三季目。特製ラグビーノートを販売するなど、積極的な活動が注目される。

RCCA(Rugby Community Club Association)が伝えたいものは、たくさんあって一言ではちょっと表しにくい。だけど、そのメンバー一人ひとりのストーリーを紐解けば、コミュニティーの持つ空気や、バックグラウンドが見えてくるかも。彼らはどこから来たんだろう。何を目指しているんだろう。今回はクボタスピアーズ所属・岸岡智樹さんの活動レポート(その2)です。(トップの写真は岩手開催の模様。釜石SWから中村良真、山田龍之介、両選手が加わった。)


2023年度、宿泊式のサマーキャンブは2か所で実施となりました。

「沖縄では予定を変更して日帰り式に。なんとか開催に…といった工夫もありました。菅平は、初めて2泊3日にチャレンジしました。実はグラウンドでの練習は、1泊の場合と大きく変わってはいないんです」

どういった内容が増えたのでしょう?

「親睦から始めてみよう! という運営側のチャレンジがありました。1日目をバーベキューからスタートさせた。席も、子どもたちだけでテーブルを囲むようにした(保護者は別の席に)。練習は2日目からだったのですが、この初回の入りのテンションの高さ、コミュニケーションの濃さが、1泊バージョンとは全然違っていた。菅平では、面白い場面をたくさん目にすることができました」


思い入れのあった菅平でのキャンプ方式

菅平は特別な場所

菅平では他の年代の合宿も多く行われていますね。

「その時期は高校たちの合宿期間。全国からさまざまなチームが集まる中で、東海大仰星と東福岡のゲームを。みんなで見ました。試合前は大人からいろいろアプローチをしましたが、試合後、何を感じたかについては子同士で共有してもらうよう促してみた。僕からは、高校生の全国トップのレベルでも、ミスは普通に起きるよね? といった話を伝えました。」

通常、ラグビー教室やサマーキャンプを行なう地と、菅平は少し様相が違いますね。

「2019年からのラグビー熱の高まりの中で感じた、ラグビーの地域格差の解消をというテーマが、このプロジェクトの本来の立ち位置。菅平には僕自身、思い入れもあります。あれだけの数のグラウンド、施設を備えて、全国から一定の時期に多くのチームが集結する。コーチも保護者も。この地でのサマーキャンプでは、ここでしか体験できないことをやりたいという面もありました。全国大会の決勝でもおかしくないチーム同士のゲームが、タッチラインのすぐ近くで見られる。選手たちの声、息遣いまで聞こえる環境ですよね。それだけでも大きな刺激になる」


滋賀県開催でのひとコマ

熱量の高い土地がある?

菅平以外で。印象深かった土地はありますか。

「関係者の方々の熱を感じたのは富山県でした。ラグビー教室への参加者が50人を超えました。告知そのものや、教室で行なう内容や主旨について、うまく声が届いたのかもしれません。全体に熱量が高かった。もちろん富山県には伝統あるチームがいくつもあります。けれど、全国的には、ラグビーどころとして知られているわけでもない。そこにこのような濃密なラグビーのコミュニティがあるんですね。ラグビー人口としては少ないのかもしれないが、可能性を秘めた土地があるのだなと実感しました」

岸岡さんが伝えたことはその土地で大切にされるでしょうね。現場のコーチや子どもたち、ゲストコーチ、インターンの学生の存在を通じて…あらためて、タッチポイントが多いことの意義を感じます。

「5年間で47都道府県を回ろうとしていて、今50%くらい。それぞれの場所で、ちゃんと伝わるものを発信したいし、僕や僕らがその時点で持っている情報がしっかりお伝えできたらと思っています」


四国は香川(写真)、徳島でセッションをおこなった

パンデミックと2019年の影響

新型コロナウィルスの蔓延による各大会の中止がありました。2023年は、大きな大会が軒並み三年ぶり復帰というタイミング。

「ようやくすべてのチームが、元の状態へ再稼働をした年だったでしょう。特に今年の高校、中学の3年生たちは、合宿の実施やチーム同士の交流、試合機会含め、きっとかなり不本意な状況でがんばってきた学年ですね」

「もう一つ別の面で感じるのは、ラグビー教室で出会うことが多い小学校5-6年生ですね。受講者はその2学年が一番のボリュームゾーンなのですが、この年代には、2019年大会に触れてラグビーを始めた子が多いんです」

! 4年前は小学校1、2年生ですね。

「そうなんです。それまでの子は、どちらかというと親主導で。親が子にラグビーをさせたくて引っ張って連れてくるケースが多かったようです。それが、この年代は子が先、なんです。ご両親ともラグビー経験でも、関係者でもないという人が一気に増えた。なので、満足度の面でも『子に対していかにアプローチするか、インパクト感じてもらえるか』が僕ら運営や指導の側にとっては大切なポイントだった気がします」

ボトルネックを越えるため

それ以降のラグビー教室の充実にもつながっていく、ですね。

「いえ、それは二の次で。大事なのは中学年代の競技人口ですね。彼ら、彼女らが中学生になった時にラグビーを続けてくれること、仲間を増やしてくれることを考えた時に、です。ラグビー人口は小学生から中学生にかけて激減する。地域クラブは小学校とともに卒業して、新たな中学校では部活動が始まるという、環境の変化が大きい。それでもラグビーを続けよう、と思うのには、本人の積極的な意思がないと、ですよね。もちろん、そこには大人の後押しが必要ですけれど」

「まずは、参加した子どもたちにとって、いい時間であるかどうか。そこからすべてが生まれると思っています。僕たちスタッフをはじめ、各地でお世話になったコーチとのつながり、ゲストコーチを含めて、今後どんなアクションにつながっていくか、僕自身もすごく楽しみにしています。もちろん今はまた、2024年のラグビー教室、サマーキャンプに向けて動きだしています」

(了)